自分で給料計算をしたい方へ
給与計算の仕方
給与計算のやり方を、社会保険料・所得税・住民税それぞれの計算式と、具体的な金額を使った実例つきで、手順ごとに解説します。「自分で給料計算をしてみたいけれど、どこから手をつければいいか分からない」という方向けの完全ガイドです。すべての計算をまとめて自動で行いたい場合は、給与計算ツールに月給を入力するだけで結果が表示されます。手元に給与明細がある方は、給与明細の見方と計算方法のページも参考にしてください。入力した数値がサーバーに送信されない仕組みはプライバシーポリシーで説明しています。
給与計算の全体像:4つの工程
給与計算の実務は、大きく分けて次の4つの工程で進みます。
- 勤怠集計:出勤日数、労働時間、残業時間、欠勤・遅刻・早退の時間を集計する。
- 支給額算出:基本給に、残業手当・各種手当(住宅手当、役職手当など)・通勤手当を加えて総支給額(額面)を求める。
- 控除計算:総支給額から社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険)と税金(所得税・住民税)を差し引く。
- 給与明細作成:支給額・控除額・差引支給額(手取り)をまとめた給与明細を作成し、従業員に交付する。
本ページでは、このうち特に間違えやすい「控除計算」の工程を、社会保険料と税金それぞれの計算式に沿って詳しく解説します。
ステップ1:総支給額(額面)を確定する
まず、その月に支給する総支給額を確定させます。
- 基本給(月給)
- + 時間外手当(残業代。法定労働時間を超えた分は25%以上の割増、深夜(22時〜5時)はさらに25%以上の割増)
- + 諸手当(住宅手当、役職手当など、課税対象のもの)
- + 通勤手当(一定額まで非課税だが、社会保険料の計算対象には含まれる)
- − 欠勤・遅刻・早退による控除(不就労控除)
例:基本給25万円、時間外手当1万5,000円、通勤手当8,000円のケースでは、総支給額は25万円+1万5,000円+8,000円=27万3,000円になります。
ステップ2:社会保険料を計算する
社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)は、いずれも総支給額(通勤手当を含む)に料率を掛けて求めます。2026年度(令和8年度)の本ツール使用料率は次のとおりです。
| 項目 | 計算式(本人負担分) | 対象 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 総支給額 × 4.95% | 全員(協会けんぽ全国平均の半分) |
| 介護保険料 | 総支給額 × 0.81% | 40〜64歳のみ |
| 厚生年金保険料 | 総支給額 × 9.15%(上限:標準報酬月額65万円) | 全員 |
| 雇用保険料 | 総支給額 × 0.5% | 全員(一般の事業、上限なし) |
例(総支給額27万3,000円、39歳、介護保険なし):
- 健康保険料:27万3,000円 × 4.95% = 約13,514円
- 厚生年金保険料:27万3,000円 × 9.15% = 約24,985円
- 雇用保険料:27万3,000円 × 0.5% = 約1,365円
- 社会保険料合計:約39,864円
実際の給与計算実務では、この料率を直接掛けるのではなく、総支給額を「標準報酬月額」という約50段階の等級表に当てはめてから料率を掛けます(例:27万円は26等級「280,000円」に区分される、など)。等級表を使うと数百円程度の差が出ることがありますが、目安としては直接計算でも十分実用的です。
ステップ3:課税所得を求める
所得税・住民税を計算するには、まず総支給額から「給与所得控除」という会社員の必要経費に相当する控除を差し引き、「給与所得」を求めます。給与所得控除は年収に応じて次のように決まります(令和8年度)。
| 年収 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 190万円以下 | 一律74万円 |
| 190万円超〜360万円以下 | 年収 × 30% + 8万円 |
| 360万円超〜660万円以下 | 年収 × 20% + 44万円 |
| 660万円超〜850万円以下 | 年収 × 10% + 110万円 |
| 850万円超 | 一律195万円 |
次に、給与所得から「基礎控除」(合計所得金額に応じて最大104万円、令和8〜9年度の特例額)と「扶養控除」(1人あたり所得税38万円・住民税33万円)、そして社会保険料控除(支払った社会保険料の全額)を差し引くと、所得税・住民税それぞれの「課税所得」が求まります。
ステップ4:所得税を計算する
課税所得(年額)に、次の速算表を当てはめて所得税額(年額)を求めます。
| 課税所得(年額) | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
算出した金額に、復興特別所得税(2.1%)を上乗せしたものが最終的な所得税額です。例:課税所得が年間150万円の場合、150万円×5%=7万5,000円に復興特別所得税2.1%を加えると、約76,575円(月割り約6,381円)になります。
ステップ5:住民税を計算し、手取り額を確定する
住民税は、給与所得から住民税用の基礎控除(43万円、令和8〜9年度も変更なし)・扶養控除(1人あたり33万円)・社会保険料控除を差し引いた課税所得に、税率10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%が標準)を掛けた「所得割」に、定額の「均等割」(年5,000円、市区町村3,000円+都道府県1,000円+森林環境税1,000円)を加えて求めます。
重要な注意点として、住民税は前年(1月〜12月)の所得を基準に計算され、翌年6月から翌々年5月にかけて天引きされます。そのため、新卒1年目や転職直後で前年に所得がなかった場合、その年の住民税はかからないか、非常に少額になります。
最後に、次の式で手取り額(差引支給額)が確定します。
手取り額 = 総支給額 − 社会保険料合計 − 所得税 − 住民税
ここまでの手順をすべて自動で計算したい場合は、給与計算ツールに月給と条件を入力するだけで、この記事と同じ計算式に基づいた結果がすぐに表示されます。
月給別・計算過程の早見表(1万円刻み)
39歳以下、扶養親族0人の場合の、月給20万円〜40万円の範囲での計算過程です。総支給額に4.95%(健康保険)、9.15%(厚生年金)、0.5%(雇用保険)を掛けた社会保険料と、そこから導かれる手取り額の目安です。
| 総支給額 | 社会保険料計 | 所得税+住民税(月割) | 手取り額(概算) |
|---|---|---|---|
| 200,000円 | 約29,300円 | 約8,038円 | 約162,662円 |
| 220,000円 | 約32,230円 | 約9,702円 | 約178,068円 |
| 240,000円 | 約35,160円 | 約11,366円 | 約193,474円 |
| 260,000円 | 約38,090円 | 約13,029円 | 約208,881円 |
| 280,000円 | 約41,020円 | 約14,693円 | 約224,287円 |
| 300,000円 | 約43,950円 | 約16,356円 | 約239,694円 |
| 320,000円 | 約46,880円 | 約18,322円 | 約254,798円 |
| 340,000円 | 約49,810円 | 約20,288円 | 約269,902円 |
| 360,000円 | 約52,740円 | 約22,254円 | 約285,006円 |
| 380,000円 | 約55,670円 | 約24,219円 | 約300,111円 |
| 400,000円 | 約58,600円 | 約26,185円 | 約315,215円 |
金額は給与計算ツールの計算エンジン(src/lib/jp-tax.ts、ステップ1〜5の計算式)で算出したものと同じです。他の月給・年齢・扶養人数の組み合わせを試したい場合は、上部のツールに直接入力してください。
自分で給料計算をするときによくある間違い
- 通勤手当を社会保険料の計算から除外してしまう:通勤手当は所得税では非課税ですが、社会保険料の計算対象には含まれます。除外すると社会保険料を少なく見積もってしまいます。
- ボーナス(賞与)を月給と同じ税率で計算してしまう:賞与の所得税は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」という、月給とは別の専用の速算表を使います。単純に月給の税率をそのまま当てはめると誤差が出ます。
- 住民税を当年の所得で計算してしまう:住民税は前年の所得を基準にするため、当年の給与から直接計算すると、特に新卒1年目や収入が大きく変わった年にずれが生じます。
- 扶養人数の年途中の変更を反映し忘れる:結婚、出産、子の就職などで扶養人数が変わった場合、年末調整で正しく申告しないと控除額が変わりません。